ヤフー株式会社

  • 業種

    インターネットサービスプロバイダー

  • 課題・要望

    設備の老朽化 消費電力アップ

  • 製品・サービス

    データセンター

左から、ヤフー株式会社 テクノロジーグループ システム統括本部 サイトオペレーション本部 インフラ技術4部 部長の西岡和俊氏、ヤフー株式会社 テクノロジーグループ システム統括本部 サイトオペレーション本部 インフラ技術2部DCシステム リーダーの秋山潤氏、ヤフー株式会社 テクノロジーグループ システム統括本部 サイトオペレーション本部 インフラ技術2部 部長の梅田聡氏
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  • インターネットサービスプロバイダー
  • 設備の老朽化
長年にわたりインターネット事業を支えてきたヤフー。 そのビジネスを支えてきたインフラが国内外のデータセンターだ。 しかしインターネットの利用者が増える一方で、取り扱うデータの容量も大幅に増加していた。 20数年前からネットワークが集中する大手町のデータセンターを利用してきたが、設備の老朽化、最新機器の消費電力アップに対応するため、ブロードバンドタワーが新設したばかりの都市型データセンター「新大手町サイト」へと移設した。

都市部のデータセンターで、レイテンシーが小さくスムーズなコンテンツ配信を実現
将来の増強にも対応可能な拡張性の高いCDNを構築

CDN事業に適した都市型データセンターで、 より良いサービスを提供

日本のインターネット黎明期から次々と新しいネットサービスを手掛け、インターネット業界をけん引してきたヤフー。テクノロジーグルーブ システム統括本部 サイトオペレーション本部 インフラ技術2部 部長 梅田聡氏は「ポータルサイトをはじめ、eコマースや会員サービス、広告などのさまざまな事業を推進しながら、多種多様な社会課題を情報技術の力で解決しようと一丸となって取り組んでいる」と述べる。

多岐にわたるヤフーのサービスを支えているインフラの一つがデータセンターであり、コンテンツ配信(CDN)事業で利用されているのが、ブロードバンドタワー(以下BBTower)のデータセンターだ。大手町にあるBBTowerのデータセンター「新大手町サイト」には、ポータルサイトYahoo! JAPANのCDNなどのシステムが構築されている。

CDNのシステム運用にかかわるテクノロジーグループ システム統括本部 サイトオペレーション本部 インフラ技術4部 部長の西岡和俊氏は「CDNにとって応答速度は重要な価値の一つ。インターネットの出入り口にあたるIX・ISPが集中している大手町にあるデータセンターに大規模なクラスターを設置できることは大変ありがたいことでした。CDNをインターネットの出入り口に近い場所に設置すれば余計なレイテンシーが発生せず、リクエストに対してすぐに応答できるので、利用者の方々にとってのメリットにもつながります」と語る。

ネットワークが集中するロケーション、余裕を持った電力、異局異ルート化した入線。
CDNに適したDC

新大手町サイトを利用し始めたのは2019年のこと。それ以前は、新大手町サイトの向かいに建つビルにあったBBTowerの第一サイトを約20年利用してきた。第一サイトでは、CDNのほか、複数のサービスを運営してきて多種多様な機材が置かれていた。ところが、設備の老朽化に加えて、1ラックあたりで使用できる電力が問題視されるようになってきたという。

テクノロジーグループ システム統括本部 サイトオペレーション本部 インフラ技術2部DCシステム リーダー 秋山潤氏は「古いデータセンターでは、供給できる電力が少なかったのです。当然のことですが、サーバーの処理能力が上がると消費電力も増えます。そこで、そろそろ新しいデータセンターに設備を移そうかと検討していたところに提案されたのが新大手町サイトでした」と語る。

さっそく新大手町サイトの見学に足を運んだ秋山氏は「初めて見た新大手町サイトの第一印象は、とにかくきれいで明るく、広いということでした。主要なIXが集中する大手町という好立地で、これだけ広いデータセンターを、このタイミングで契約できるのはまさに渡りに船でした」と語る。

また、新大手町サイトでは懸念されていた電力についても十分であり、将来、消費電力の高い新しい機器を導入する際の心配もなくなる。

「サーバーは、物理的にラックに搭載できる数ではなく、電力が上限になります。ラックあたりの電力キャパシティーが多ければ多いほど、CDNの運用コストが安く抑えられます」(西岡氏)

もうひとつ注目したのは、ビルへのキャリア入線に完全に異局異ルートに対応していることだった。これにより、通信障害、あるいは自然災害が発生したときにも、通信を維持しやすくなる。新大手町サイトは、CDNに適した仕様を持っていた。

旧サイトからの移設作業はトラブルも起こらず、想定より短期間で終了

2019年1月に発注、10月には利用、構築、移設を開始した。Yahoo! JAPANで使用していたサーバーやネットワーク機器は膨大な量に達する。機器の移設は徐々に進め、旧サイトで停止させたものから、3年かけて移していった。あわせて新しい機器の導入も進めた。

「移設の際は、移設対象の機器を停止させ、その性能を別の機器に肩代わりさせてサービスを継続しますので、その間、全体のキャパシティーは減ることになります。そのため、より短い期間で作業を完了させたいわけですが、旧サイトからの移設は、大きなトラブルもなくスムーズに進み、当初想定していたよりも早く完了することができました。」(西岡氏)

これはBBTowerが、必要となるラックや電源などを手配しておくなどの事前準備をしっかりと対応していたこと、第一サイトと新大手町サイトの物理的距離が短かったことが要因だ。

常駐スタッフ用のオフィスも用意。運用しやすさも工夫されたDC

移設後の運用において新大手町サイトは優れていた。例えば、新大手町サイトには、運用のための常駐スタッフが作業するオフィスが用意されている。ヤフーも数名のスタッフを常駐させ、サーバーの設置やネットワークの監視などの日常的な運用メンテナンスだけでなく、突発的なトラブル対応に当たっている。そのオフィスは、サーバー室に隣接しているため、トラブル発生時はすぐサーバーにたどり着ける。またケーブルなどの機材の保管室も用意されており、機器が故障した際も迅速に対応できる。

「旧サイトは1フロアの面積が狭く、複数のフロアにまたがって利用していました。そのため、運用担当者は作業をするときにフロア間を往復する必要があったのです。しかし、新大手町サイトは1フロアですべての機器を収納できたので、フロア間を行き来することなく効率よく作業できるようになりました」(秋山氏)

また、ケーブルを配線する際は業者に依頼して作業するデータセンターも少なくないが、BBTowerではラック間にケーブルランナーを用意しており、ヤフーの常駐スタッフが自由に配線することも可能だ。急な配線変更も、自分たちで対応できるのは大きなメリットである。

また、ヤフーではBBTower以外に多くのデータセンターを活用しているが、「痒いところに手が届くサービス」と述べるのが、「ラック単位の電流値をリアルタイムで監視できるサービス」だ。「電力消費を抑制する施策を検討する際に、どのようなリクエストを受けたとき、どれだけの電力を消費するのかというデータは重要です。データを蓄積してピーク実績から傾向を調べ、更にリアルタイムで状況ごとの電力消費量を可視化できれば、改善が進めやすくなります。」(西岡氏)

「ポータルでの電流値表示以外にも、当社社内システムと連携しやすいようにデータ提供形態への要望にも柔軟に対応していただき、大変ありがたかったです」(秋山氏)

このほかにも、物理的な入館カードを使わずに、顔認証や指紋認証のような生体認証で入館できるシステムなど、新大手町サイトには利用するものにとって便利な機能が数多く用意されている。

リッチなコンテンツ配信を今後も推進
ユーザーの要求に応えるサービスをともに実現していきたい

コロナ禍においてインターネットを飛び交うデータのトラフィック量は増加してきた。また近年、動画や写真などを駆使するリッチコンテンツも増えてきている。インターネットを活用したサービスやビジネスを支えていくためにも、データセンターの役割は大きい。

「ヤフーが提供するサービスは時代にあわせて変化してきました。かつてのニュースはテキストが中心でしたが、いまでは解像度の高い画像が多用され、ライブ中継などで動画を提供する機会も増えています。」(西岡氏)

「そのようにリッチなコンテンツ配信を拡大していくには、CDNの増強、そしてCDNが稼働しているデータセンターも拡充していく必要があります。今後ともBBTowerには良きパートナーとして、変わらぬ付き合いをお願いしたい。これからも期待しています」(梅田氏)と締めくくった。
企業名
ヤフー株式会社
https://www.lycorp.co.jp/ja/
設立
1996年
所在地
東京都千代田区紀尾井町1-3 東京ガーデンテラス紀尾井町 紀尾井タワー
事業内容
Zホールディングス株式会社の子会社であり、1996年4月にサービスを開始したYahoo! JAPANをはじめ、eコマース、検索、 ニュースなど約100のサービスを提供する日本最大級のインターネットサービスプロバイダ―である。