株式会社KADOKAWA Connected

  • 業種

    ICT / 業務コンサルティング

  • 課題・要望

    「ニコニコ生放送」の録画データ配信用ストレージの更新

  • 製品・サービス

    Scality RING

株式会社KADOKAWA Connected KCS部 部長兼KCS部Server & DataStore課 課長
加藤 俊弥 氏

株式会社KADOKAWA Connected KCS部 Server & DataStore課
辻下 卓見 氏
  • ストレージ
  • ICT/業務コンサルティング
  • ストレージ基盤の刷新
加藤 俊弥 氏
「Scality RINGを選択したことで、高い安定性とスケーラビリティを有するストレージ・システムを、低コストで構築することができました」

辻下 卓見 氏
「システムの安定性はもちろん、ドキュメントの充実度やサポートの品質を高く評価しています」

「働く人々の『生涯生産性』を、最高に高めるためのソリューションを提供する」ことを理念として2019年4月に設立された株式会社KADOKAWA Connectedは、KADOKAWAおよびドワンゴの情報システムを担当していたエンジニアや、ドワンゴで「niconico(ニコニコ)」のインフラ部分を担当していたエンジニアたちで構成される技術者集団だ。 グループの情報システム・サービスインフラの設計・運用・管理を一元化し、コスト削減とともにKADOKAWAグループのDX(デジタルトランスフォーメーション)を実現している。またグループ外の企業へ、リモートワーク支援、働き方改革支援などのDXアドバイザリーサービスを提供している。同社は、2019年10月、ライブ配信サービス「ニコニコ生放送」の録画データの配信用ストレージ・システムとして、ソフトウェア・デファインド・ストレージ(SDS)の『Scality RING』を導入した。

ライブ配信サービスの録画データ用ストレージとして
Scality RINGを導入、
安定した性能の確保と運用コストの大幅削減を実現

高負荷でも性能が低下しない、新たなストレージ・システムへの移行を検討

株式会社KADOKAWA Connected
KCS部 部長兼KCS部Server & DataStore課 課長
加藤 俊弥 氏
KADOKAWA Connected およびドワンゴでは、ニコニコ生放送の録画データ配信用ストレージとして、以前からベンダー製のアプライアンス製品と、自社開発したIAサーバーベースのSDSを二重構成で利用していた。KCS部 部長兼KCS部Server & DataStore課 課長の加藤 俊弥氏は、その目的を次のように説明する。

「映像配信はniconicoの中枢機能なので、耐障害性を考えた時、単一のストレージ・システムに依存するのは大きなリスクです。そこでデータの記憶環境を二重化するために、2系統のストレージ・システムを用意しています」。

この2つのストレージ・システムのうち、今回リプレイスの対象となったのが、ベンダー製のアプライアンス製品だ。その理由として加藤氏は、スケールアウト型でなく、記録容量の増加に従いパフォーマンスの低下が発生していたこと、障害時などでの運用に多大な工数がかかっていたこと、それに伴い運用コストも高止まりしていたことを挙げる。

「例えばストレージ・システムにメタデータの障害が発生した時、以前の製品のベンダからは"復旧作業を行うためには48時間、稼働を停止する必要がある"と言われたことがあります。障害の発生した機器は一旦サービスから外して作業をするので、サービス自体に影響が出ることはありませんでしたが、その作業に対応するためには我々にも大きな負荷が掛かりました。こうした課題を何とか解決できないかと考えていました」(加藤氏)。

そこで同社が新たなストレージ・システムとして選択したのが、汎用のIAサーバーを用いてスケールアウト型ストレージ・システムを実現する、ソフトウェア・デファインド・ストレージ (SDS) の『Scality RING』だった。

高い安定性と柔軟性、コスト優位性、豊富な実績などから『Scality RING』を採用

同社が新たなストレージ・システムに求めた要件は大きく3つ、第一に性能が安定していること、第二に製品価格や保守費用を含めたトータルコストを低減できること、そして第三に可用性や拡張性が高いことだ。

「従来利用していたベンダー製のストレージ・システムは、パフォーマンスへの懸念に加えて、運用フェーズに根深い問題を抱えていました。システムに精通したエンジニアしかメーカーのサポートを受けることができず、結果的に運用は一人の専任者に依存する形になっていたのです。こうした属人性を排除したいという思いも非常に強かったですね」(加藤氏)。

そして同社は、いくつかのストレージ製品を比較検討、最終的にScality RINGの導入を決定した。その理由について、加藤氏は次のように説明する。

「専門的な話になりますが、Scality RING (sproxydコネクター) では、"オブジェクトの一覧を取得するAPI (List API) は提供していない"とのことでした。このAPIは利便性の観点からは有用なものですが、一方でストレージからこれを無くすことで、高い安定性や拡張性が間違いなく保証されていると考えました。今回リプレイス対象となったストレージ・システムは多くのシステムが利用するものではなく、特定のシステムが占有して利用するものです。我々が優先すべきはそのシステムのアクセスパターンにおける性能や安定性でした。Scality RINGの設計思想もまた、我々の求める要件に合致したということです。実際には実運用上、該当機能に相当するものをメタDBとして別途開発して補いましたが、私たちのユースケースやアクセスパターンに合わせた設計で自社開発出来た点が非常に良かったです」。

株式会社KADOKAWA Connected
KCS部 Server & DataStore課
辻下 卓見 氏
また、導入コストも競合の製品より安価であったこと、既に他社の動画配信サービスでの実績があったことが、導入の後押しをしたという。

加えて、日本人スタッフによる日本語および日本時間でのサポート体制が充実していること、同社の監視システムに組み込みやすかったこともScality RINGの大きなアドバンテージだったという。この点について、KCS部 Server & DataStore課の辻下 卓見氏は、次のように説明する。

「Scality RINGの場合、ノード(筐体)へのエージェントの組み込みが自由に行えることもあり、監視ツールへのログやメトリクスの取り込み、SNMPによるシステムの監視などが柔軟に行えます。運用の効率化の観点から、これらは大きなメリットです」。

従来ピーク時の6~7倍の映像配信にも対応、
さらに丸々1人分の人件費も削減可能に

同社は、2019年10月からScality RINGによるストレージ・システムの運用を開始した。具体的なシステム構成としては、IAサーバー 9台で1つのクラスタを構成し、ストレージの物理容量としては1.6PB、実効容量を1PB確保した。

Scality RINGによるシステムの稼働開始から約10か月を振り返り、加藤氏はビジネス面での導入メリットを次のように説明する。

「配信需要の増大に対して柔軟に対応できるようになりました。例えば、今年2020年の2月からは新型コロナウイルスの感染拡大の影響で配信の需要が急激に増加、特に4月・5月のゴールデンウイークには政府の緊急事態宣言を受けて外出を控えられた方が多く、需要は増大の一途をたどっていました。その上、niconicoはそのタイミングで「オンライン帰省」というイベントを実施しました。結果として、ピーク時のタイムシフトによる映像配信は平常時の夜間と比べて6~7倍にも増大したのですが、許容値を超える遅延が発生した際のスタンバイ・システムとしての自社開発のSDS側に配信リクエストが流れることもなく、Scality RINGのシステムだけで十分に対応することができました」。

また、運用面・コスト面の観点からは、辻下氏が次のように説明する。。

「Scality RINGによるストレージ・システムの導入により、運用やメンテナンス時の作業工数は大幅に削減されました。クラスタ構成によりメンテナンスもノード毎に行えますので、サービスがオンラインのまま柔軟に作業が可能です。結果として、これまで1か月1人月かかっていた運用パワーを、1人日もかからないレベルにまで低減させることができました。いわば丸々1人分の労力・人件費が削減できたイメージで、まさに劇的なコスト削減効果だと言えます」。

他のストレージ・システムのScality RINGへの移行も順次検証へ

今回Scality RINGを導入するにあたって、加藤氏はブロードバンドタワーおよびスキャリティ・ジャパンのサポート体制も非常に心強かったと振り返る。

「提案を受ける際には、ブロードバンドタワーとスキャリティ・ジャパンのチームに当時のストレージ・システムの負荷状況をお伝えしたところ、見積と併せてシステム設計に必要となるハードディスクの回転数やハードウェア構成などの詳細な技術情報を計算式と共に提示していただけました。そこから、本当に数多くのプロジェクトに取り組んできた実績があるに違いないと推察できました」。

また製品導入後には、スキャリティ・ジャパンから1日6時間、計3日間に及ぶオンサイトによる内部構造にまで踏み込んだトレーニングを受けたことで、Scality RINGに対する技術的な理解度が格段に高まったという。

「トレーニングを受けたことで、自社でScality RINGを運用していく上での大きな安心感を得られました。また、テスト運用時には細かい動作上の疑問点などにも対応策を含めて丁寧に回答頂き、我々の不安要素は1つ1つクリアされていきました。これなら間違いなく安心して運用できると確信できました」(辻下氏)。

今後同社では、社内の他のストレージ・システムをScality RINGに移行できるかを順次検証していく考えだ。

「引き続きブロードバンドタワーとスキャリティ・ジャパンには、ユースケースのさらなる拡大が可能かどうかを一緒に検証していただきたいと思います。また、ユーザーコミュニティの場にも積極的に参加させていただきたいですね」(加藤氏)。

Scality RINGは、KADOKAWAグループの発展を支える重要な基盤として、これからもますます活用されていく。
企業名
株式会社KADOKAWA Connected
https://kdx.co.jp/
設立
2019年4月1日
所在地
東京都千代田区富士見2-13-3
株主構成
株式会社KADOKAWA 100%
事業内容
ICT/業務コンサルティング、システム設計/構築/運用、クラウドサービス、Bigdataサービス