株式会社電脳交通

  • 業種

    タクシー会社向けサービス業

  • 課題・要望

    新たなクラウド基盤への移行 および運用負荷の軽減

  • 製品・サービス

    Amazon Web Services / MSP監視運用サービス

株式会社電脳交通 取締役 CTO兼Founder
坂東 勇気 氏
  • MSP監視運用
  • タクシー会社向けサービス業
  • クラウド基盤への移行
「AWSのシステム基盤としての耐障害性・信頼性・安定性には、コストを超える価値があり、高く評価しています。ブロードバンドタワーには、これからも総合的な支援を期待しています。」

2015年12月にタクシー配車システムを開発・提供する企業として徳島市で創業した株式会社電脳交通は、ITを積極的に経営に取り入れることで顧客企業に寄り添ったイノベーションを起こし、「人々に新しい移動する価値を提供する」ことを目指している。現在提供するサービスとしてはクラウド型タクシー配車システムや配車業務を代行するクラウド型タクシーコールセンターサービスなどが挙げられる。
これまで同社は、サービス開発のシステム基盤として国内のパブリッククラウドサービスを利用していたが、運用業務にかかるマンパワーや耐障害性・拡張性に課題を抱えていた。そこで新たなシステム基盤への移行を決定、その際に選択したのが、APN(※)コンサルティングパートナーであるブロードバンドタワーが提供するAmazon Web Services(以下AWS)と、MSP監視運用サービスだ。

※APN(Amazon Web Services Partner Network):Amazon Web Services, Inc.が提供するクラウドサービス(=AWS)のパートナープログラム

サービス開発のシステム基盤をAWSに移行、
監視サービスの導入で運用工数を低減し、耐障害性も大幅に向上

インフラ構築の工数を削減し、 柔軟な拡張性も確保したい

株式会社電脳交通
取締役 CTO兼Founder
坂東 勇気 氏
電脳交通は社名が示す通り、交通を電脳化し、移動に対する人々の様々なニーズをITの力で充たしていくことで地域交通の課題を解決することを目指している。 現在同社が提供する代表的なサービスの1つがクラウド型タクシー配車システムで、顧客から配車の依頼を受けたタクシー会社が、クラウド経由で最適な車両を顧客の元に迅速に手配するためのシステムだ。タクシー会社に求められる初期投資はPCとインターネット回線、タクシーに搭載するタブレット端末のみで、さらにタブレット端末は電脳交通から提供を受けることができる。タクシー会社は初期コストを安価に抑えつつ、配車業務においてはクラウド上でアップデートされ続ける最新機能を利用することができるのだ。

同社ではクラウド型タクシー配車システムを利用して配車業務を代行するクラウド型タクシーコールセンターサービスも提供しているが、各種サービスの開発背景について、取締役 CTO兼Founderの坂東 勇気 氏は、次のように説明する。

「これまでタクシーの配車を行う業務システムは、オンプレミス環境で稼働する非常に高価なものしか無く、利用できるのは都市部の大規模なタクシー会社に限られていました。また地方では道路を走っているタクシーを止めて乗るという形よりも、タクシー会社に連絡して車両を呼ぶ形態がほとんどです。そこで我々は、中小規模のタクシー会社でも安価に利用できるクラウド型のタクシー配車システムを開発、提供することで、タクシー業界全体のデジタルトランスフォーメーション(DX)の底上げをお手伝いしたいと考えました」。

以前、同社はサービス開発のシステム基盤として、国内の事業者が提供するクラウド(IaaS)サービスを利用していたが、限られたマンパワーの中から専任のインフラエンジニアを割り当てることは難しく、創業当時からシステム開発の責任者である坂東 氏自身がインフラ部分の管理・運用をも担うという状況が続いていた。

「ずっと考えていたのは、インフラ構築の工数を削減できるシステム基盤が必要だということです。またインフラの安定稼働を担保すること、柔軟に拡張できること、運用管理の工数自体を低減することも大きな課題でした。こうした数々の問題を解決するために、新たなクラウド基盤への移行を決めました」。

その際に同社が選択したのが、ブロードバンドタワーがAPNコンサルティングパートナーとして提供するAWSだ。

豊富な実績とエンジニア数、 安定稼働性がAWS選択の決め手

既存のIaaSサービスからの移行先としてAWSを選択した理由について、同社の中心的なシステムエンジニアでもある坂東氏は、次のように説明する。

「当社は徳島市に本社を置く企業ですが、AWSを使っているエンジニアは私の周囲にもかなり多くいて、相談しやすい環境がありました。またAWSは純粋に普及率が高く、導入実績も豊富です。我々自身がエンジニアを採用する際、あるいは社外のITパートナーに委託する際も、よりスムーズに必要なナレッジを獲得することができると考えました」。

今回電脳交通がクラウド型タクシー配車システム向けに導入したのは、仮想サーバ基盤としてのAmazon Elastic Compute Cloud(Amazon EC2)、そしてデータベースサービスとしてのAmazon Relational Database Service (Amazon RDS) だ。Amazon EC2+Amazon RDSの採用により、同社はデータベースサーバを従来のIaaSからPaaSへと移行した形になる。

「AWSでは有用な機能が豊富に提供されていますが、今回我々のインフラ関連業務をさらに楽にしてくれたサービスが、Amazon EC2と併せて採用したAmazon RDSでした。Amazon RDSを導入したことで、自社でデータベースを構築、運用していた時と比べてインフラ全体の稼働は安定し、運用業務はかなり楽になってきていると思います」。

また同システムでは、Amazon ElastiCacheを用いてデータベースの負荷を軽減させているほか、データ解析基盤ではAmazon Simple Storage Service (Amazon S3)やAWS Lambda、Amazon OpenSearch Serviceを用いるなど、さまざまなAWSのサービスを併せて活用しているという。

AWSへの移行プロジェクトは、2019年初頭から検証作業に入り、同年末までに移行を完了した。また電脳交通は同じタイミングで、ブロードバンドタワーの提供するMSP監視運用サービスも導入している。

運用工数は約3分の1~6分の1に激減、 耐障害性も大幅に向上

現在同社のシステムエンジニアは、ITパートナーからの常駐2名を含む計7名で構成されている。インフラ関連業務は複数のメンバーが対応できるものの、基本的には以前から坂東 氏1名が主に担当しているという。

AWSへの移行から現時点で約2年が経過しているが、これまでに実感している導入効果について、坂東 氏はまず運用工数の激減を挙げる。

「我々が提供するサービスはB to Bのシステムということもあり、コンシューマ向けサービスほど環境変化が激しいものではありません。AWS+B to Bシステムという組み合わせなら、運用には本当に手間がかかりませんし、安定稼働しているのでトラブルもまず起こりません。運用にかける私のマンパワーも、以前の約3分の1~6分の1にまで激減しています」。

実際の運用業務としては、年に1~2回実施するスケールアップの作業が主で、それも1回約5分の計画停止で完了できるとのことだ。

またAWSへの移行により、耐障害性も大幅に向上したという。

「以前利用していたIaaSサービスでは、当社が直接被害を被ったことはありませんが、データベースがダウンしてデータが消失したとか、CPUの使用率が100%に達してシステムが稼働していなかったという事態が起きていました。同じような障害が万一発生した時には復旧作業が非常に大変です。しかしAWSではそうしたニュースを聞いたことがありませんし、実際に障害も全く発生していません。システム基盤としての耐障害性は大きく向上したと思います」。

ブロードバンドタワーの豊富な知見を高く評価、
将来にわたるパートナーシップに期待

今回、AWSへの移行支援を受けるITパートナーとしてブロードバンドタワーを選択した理由について、坂東 氏は「将来にわたってインフラ運用に関する総合的なサポートを受けられると考えたからです」と説明する。

「ブロードバンドタワーは提供しているソリューションの幅が非常に広く、クラウドサービスやITのベンダーにとどまらない、上位の存在というイメージを持っています。今後我々のビジネスがさらに拡大していけば、データセンターに独自の基盤を作りAWSから逆にオンプレミス環境に移行する、あるいはクラウドとオンプレミスを連携してハイブリッドクラウド環境を構築する、といった選択肢も出てくるでしょう。そうした将来像を見据えた上でも、ブロードバンドタワーの知見やノウハウを活かせることは、我々自身の大きなアドバンテージになると考えています」。

また今回、MSP監視運用サービスを採用したことで、坂東 氏自身もシステム監視基盤の構築や運用に掛ける工数を大幅に低減することが可能となった。これにより本来の開発業務にさらに専念できるようになったという。

「付け加えるなら"何も起こっていない"というのも、非常に大きなポイントですね。移行当時こそ、アラートの発生に伴うやり取りもありましたが、今では皆無です。やはりシステム基盤としてのAWSの信頼性、安定性を大いに実感するところです」。

同社が提供するクラウド型タクシー配車システムは、現在徳島県下で事業を展開するタクシー会社の9割以上で採用されており、国内全体でもほぼ全都道府県で利用されているという。同社は東京オフィスを東京都渋谷区に構えているが、東京での導入比率もかなり上がってきているとのことだ。

「タクシーの保有台数が30台以下のタクシー会社様では、運転手の方が"ここを走れば売上が上がる"ということを経験的に理解されていますが、保有台数が数百台から数千台規模のお客様からは、データ解析の要望が次第に高まっています。今は走行データなどを収集して可視化する取り組みをしている段階ですが、将来的にはAIを活用したビッグデータ解析を検討する時期が来ると思いますし、そうなればシステム基盤のさらなる拡張も必要です。その際にもブロードバンドタワーには、豊富な知見とエンジニアリング力を発揮いただけると期待しています」。
企業名
株式会社電脳交通
https://cybertransporters.com/
設立
2015年12月17日
所在地
徳島県徳島市幸町3丁目101
事業内容
タクシー配車システムの開発・提供、タクシー会社の配車業務受託運営サービスの提供