株式会社サイバーエージェント

  • 業種

    インターネット広告・メディア・ゲーム事業

  • 課題・要望

    通信品質の向上

  • 製品・サービス

    dc.connect NeX

  • ネットワーク
  • インターネット広告・メディア・ゲーム事業
  • インフラ強化
インターネットを活用しさまざまなサービスやコンテンツを提供しているサイバーエージェント。いくつもの新たな事業を立ち上げて、多種多様なサービスを開発提供し続けている同社だが、グループ会社が提供しているサービスで発生する通信エラーに頭を悩ませていた。その通信環境の改善のために新たなネットワークとして選ばれたのがBBTowerの閉域網dc.connect NeXだった。
ポイント
  • 〇 パブリッククラウドとデータセンターの接続方法を、インターネットVPNからBBTowerの閉域網dc.connect NeXへと刷新。通信品質の向上で、通信エラーの発生を大幅に削減
  • 〇 L2接続とGraceful Restartに対応することで、メンテナンス時の転送停止を回避
  • 〇 複数リージョンに対応したDR環境を実現し、柔軟性と拡張性を確保
  • 〇 データセンターと閉域網をBBTowerに統一したことで、窓口が一本化。運用負荷の軽減に成功

パブリッククラウドとデータセンターをBBTowerの閉域網「dc.connect NeX」で接続。 ビジネスの成長にあわせて柔軟に対応できるインフラへ

多種多様なエンタメテックをインフラから支えるCIU

CIU(CyberAgent group Infrastructure Unit)
Group Success Div Manager
Manager Studio Network Specialist
篠原 雅和氏
 「21世紀を代表する会社を創る」をビジョンに掲げるサイバーエージェントは、インターネット広告、メディア、ゲームの3事業を柱に、近年ではIP・コンテンツ分野の強化やAI研究、小売りや医療・金融などのDX推進など、幅広いビジネスを展開している。

それらの事業をインフラ面で支えているのがCyberAgent group Infrastructure Unit(CIU)だ。CIUの取り組みについて、CIU Group Success Div Network Specialistを務める篠原雅和氏は「弊社の主力メディアの一つであるメディアサービス『Ameba』は、2024年に20周年を迎えました。CIUでは、社内およびグループ会社向けにプライベートクラウドやネットワークなどを提供しており、『Ameba』含めた弊社の様々なサービスを支えております。

既存サービスの品質向上はもちろん、新しく生まれるサービスにもインフラ面から協力することで、利用者の皆様にとってより良い体験を創出したいと考えています」と語る。

それらのサービスを支えるインフラの重要性について、 同Network Engineerの佐久間充氏は、「特に動画配信は送信するデータが途切れると再生に支障が生じます。映像やゲームなど、さまざまなコンテンツを円滑にお楽しみいただくためにも、ネットワークインフラは重要な位置づけとなります」と説明した。

利用者急増によって通信エラーが発生しだしたサービスのインフラ改善へ

CIU(CyberAgent group Infrastructure Unit)
Group Success Div
Network Engineer
佐久間 充氏
 グループ会社がコンシューマ向けに提供している一部のインターネットサービスでは、Google Cloud とデータセンターをインターネットVPNで接続する構成でサービスを提供していた。

利用者はサービスのフロントエンドとなるGoogle Cloudにアクセスし、そこで発生する各種データはデータセンター上に構築したオンプレミスのシステムで処理される。CIUではそのシステムにおけるネットワークインフラの構築や運用を担っている。

篠原氏はインフラ構築の進め方について、「インフラはサービスの規模や用途、利用状況を鑑みて適切なものを選定しています。特に新規サービスを立ち上げる場合は、スモールスタートとして、まずはコストを抑えた方式でインフラを用意し、事業が拡大したら改めて見直していきます」と語る。

そのコンシューマ向けサービスも、立ち上げ当初はインターネットVPNによる接続で十分に対応できていたが、利用者数が大幅に拡大したことで、インターネット回線品質に起因した通信エラーが発生しだしたという。

「エラーが発生しても再送処理で対処はできていたものの、遅延に伴って利用者や運用に影響は生じていました。そこで、そのグループ会社の担当者から『改善に取り組みたい』という相談を受け、クラウドとデータセンターとの接続を、インターネットVPNから閉域網へ刷新するプロジェクトが始動しました」(佐久間氏)

閉域網は、拠点同士を直接接続してインターネットから分離し、限定されたアクセスのみを許可する物理的なプライベートネットワークだ。一般のインターネット上をデータが流れるインターネットVPNと違い、安定した通信品質、高いセキュリティーを担保できるのが特徴である。

また閉域網への刷新にあわせて、DR対策を強化することにした。従来利用していたインターネットVPNでは複数リージョンに対応できる構成ではなかったが、新たな閉域網を構築すれば複数リージョンにも対応可能な構成となるためだ。複数のリージョンを用意できれば、片方のリージョンのシステムに問題が発生しても別のリージョンに置いたシステムが稼働しサービス提供を継続できる。

柔軟性の高い閉域網サービス「dc.connect NeX」を採用

 刷新プロジェクトを進めるに当たり、サイバーエージェントではいくつかの事業者に打診したが、その一つがブロードバンドタワー(BBTower)だった。刷新プロジェクト対象のコンシューマ向けサービスがすでにBBTowerのデータセンターを利用していたことも声を掛けたきっかけだった。

「データセンターやネットワークなど、インフラに関するさまざまな事業、サービスをトータルで提供しているBBTowerなので、きっと閉域網サービスも提供しているだろうと思って調べてみたのです。そうしたら、ちょうどよいサービスがあったので相談しました」(佐久間氏)

それがBBTowerの「dc.connect NeX」だった。これは、データセンター同士、あるいは主要なパブリッククラウドと閉域網で接続する専用線サービスである。BBTowerのデータセンターの契約ラック間やパブリッククラウドを1対1接続(L2)、あるいは1対多接続(L3) が可能なネットワークを提供する。

「事前の調査や検証を通して、私たちが望むインフラには、L2接続とGraceful Restartが必要だとわかりました」(佐久間氏)

パブリッククラウドとデータセンターとの接続には、独立したネットワーク同士を接続するL3接続、両社を同一のネットワークとして扱うL2接続が用いられるが、dc.connect NeXは、L2、L3のいずれにも対応していた。

Graceful Restartとは、機器の再起動やネットワークの切り替えの際に転送を中断させないための機能で、これを利用するには、データセンター内に終端装置を設置し、パブリッククラウドとデータセンターをL2で接続する必要があった。

「パブリッククラウドでは定期的なメンテナンスが入ります。その際Graceful Restartが使えないと、メンテナンスのたびにネットワークから通信経路が見えなくなり転送停止時間が発生し、システム全体に影響が及んでしまいます。そこでL2接続とGraceful Restartを必須の条件として探していたのです」(佐久間氏)

爆速と呼べる短期間での構築

 検討の結果、サービスの内容、構築期間の短さ、BBTowerの提案力や技術力の高さからdc.connect NeXが選ばれた。2024年7月にdc.connect NeXへの切り替えが行われ、新しい閉域網上でサービスが提供されるようになった。

通信品質も安定し、通信エラーや遅延も解消した。複数リージョンに対応したDR環境も実現できた。また、データセンターも閉域網もBBTowerに統一したことで、問い合わせや相談の窓口も一本化し、運用負担も軽減した。

「私たちは発注から開通まで2ヶ月程度を見込んでいたのですが、BBTowerからは15営業日で開通できるという答えをもらえました。予想外だったのは、実際に作業に入るとそれ以上の早さで進んだことですね。通信エラーに頭を悩ませていたグループ会社からは、『少しでも早く対応してほしい』と要望されていたので、思わず爆速と形容したくなるほどの構築期間の短さは、ありがたかったです」(佐久間氏)

刷新プロジェクトが短期間で進められた要因について、篠原氏は「データセンターと閉域網の両方を同じBBTowerに依頼できた点も大きいと考えています。データセンターもネットワークも熟知したBBTowerが提供してくれるので信頼感、安心感もありました」と説明する。

その上で佐久間氏がもっとも高く評価したのが、技術力もさることながら、BBTowerの提案力だった。パブリッククラウドとデータセンターの接続ルート、冗長構成の組み合わせなどさまざまなパターンが考えられたが、BBTowerはそれぞれのメリット、デメリットを提示し、最適と思われるプランを提案した。

「社内での議論あるいはグループ会社の担当者に説明する際、様々な視点から十分考慮をした上でプランを提示して関係者と落としどころを探るために『松・竹・梅』でメリットデメリットを提示するのが基本です。そのため、一つの『最適なプランだけ』を提示されても困るのです。その点BBTowerは複数の選択肢を提示しながら妥当と思われるプランを示してくれますので、関係者を説得しやすいし、納得してもらいやすいのです」(佐久間氏)

拡張性の高いインフラによって、ビジネスの成長にも柔軟に対応

 BBTower の「課題の背景を理解した上での提案力」は篠原氏も評価していた。

「ベンダーに相談をする場合、まずは当社の課題を説明するわけですが、BBTowerは解決したい課題だけにフォーカスするのではなく、その背景を探って根本的な問題を解消させるためのアプローチを提示してくれます。ユーザー目線で一緒に取り組む姿勢は非常に信頼できます」(篠原氏)

そうした姿勢は「サイバーエージェントのビジネスにもマッチしている」と篠原氏は続ける。

「サイバーエージェントは、スピード感を重視してビジネスを進めてきました。スモールスタートで開始してうまく軌道に乗ったサービスが途中で方向転換することもたびたび起こります。私たちとしては、時間を掛けて100点満点の提案を持ってきてもらうよりも、合格点の選択肢をスピーディーに用意していただき、柔軟に動けるほうがありがたい。そうした意思を察しつつ適切に対応してくれたBBTowerには、大きな信頼を寄せています」(篠原氏)

実際、今回の刷新によってインフラの拡張性も高まり、ビジネスの発展に対応しやすくなっていると感じるという。

「将来パブリッククラウドのアカウントが増えたとしても、今回構築した閉域網が使えるのでクラウドとデータセンターの接続が容易になり、拡張しやすくなりました。今後、他のパブリッククラウドサービスを利用する選択肢が出たときでも、物理環境としては今のdc.connect NeXそのままで新しい環境に接続できますし、将来のビジネスという面から見ても大きなメリットになると期待しています」(佐久間氏)
企業名
株式会社サイバーエージェント
https://www.cyberagent.co.jp/
設立
1998年3月18日
所在地
東京都渋谷区宇田川町40-1 Abema Towers
事業内容
メディア事業、インターネット広告事業、ゲーム事業、投資育成事業